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■介護保険と住宅改修

 現代の社会福祉の背景として、少子高齢社会、地域社会の変化、家族機能の変化などがあげられます。この中でも、わが国の高齢化比率は2005年で21%、2020年には27.8%となり、国民の4人に1人が高齢者という世界に類をみないほどの速さで進行しています。
これからの高齢化社会に向かっていく中で若者は介護という文字は切っても切ることのできない存在となっています。
日本の家屋は段差が多く、和式の生活様式が多い為、高齢者や障害をもつ方々が生活していくには、技術的にも経済的にも容易ではなく、住宅改修の困難さが在宅生活をあきらめさせる要因と指摘する報告もあるくらいです。
高齢になっても、たとえ障害を持っても、住み慣れた地域や自宅で可能な限り長く暮らしたいと思うのはごく自然のことです。そのための基盤整備が住宅改修です。また、住宅改修は重要な生活支援サービスといえます。
この住宅改修も2006年(平成18年)に改正された介護保険法を利用することにより、在宅介護や高齢者や障害をもつ方々の生活がしやすいようにすることで経費面での負担が軽くなります。ただ、介護保険法を利用するにも、いくつかのポイントがあります。


○まずしなくてはならないこと
 介護保険法を利用して住宅改修を行うには、まず要介護認定を受けなければなりません。

○何の為の改修か?
 申請時の必要書類として「改修が必要な理由書」があり、原則は担当のケアマネージャーが作成することになっています。しかし、多くのケアマネージャーから「書き方がわからない」「業者が書いてくれるから任せている」との声を聞きます。理由が明確でなければ、手すり一本の取り付けも制度を利用することはできません。

○手段と部材、機材(福祉用具を含む)を知る。
 例えば、手すり部材には様々な製品があり、知らなければ手すりの選択もままなりません。便器は今やハイテク工業製品となっています。また、介護保険で利用できる福祉用具にはどのようなものがあるのでしょうか。このような知識を把握しておくことで、より良い改修工事ができるのです。

○住宅改修は家族問題である。
 「在宅での生活を続けさせたい」という思いがなくては一歩も前に進みません。
 本人・家族の要望と、ケアマネージャーや医療の専門家が判断する必要性が食い違うこともしばしばです。
 家族の同意を得るためには、考え得る最高の提案をし、決断をしてもらわなければなりません。住宅改修に関わる専門家の提案力が問われます。

○導入時期の見極め。
 日常生活の中で不便なところがあれば、危険と感じるところがあれば、できるだけ早く検討すべきです。本人・家族は「いつかよくなるだろう」と希望的観測を持ちがちです。しかし、検討は進めておき、「いつでも施工できる」状態にしておきましょう。少なくとも、制度を利用したいのであれば要介護認定の申請はしておく必要があります。

○「だれがコーディネートし、決定し、責任を負うか」を確認しておく。
 建築確認を必要とする新築・増築・改築工事ならば設計者(=建築士)が携わりコーディネート役を務めることもあります。しかし、住宅改修だけの小規模な工事ではだれがその任を負うのでしょうか?正直なところ明確な決まりはありません。家族がせこう業者を選定し段取りを勧めることもあります。しかし、多くは担当ケアマネージャーがコーディネート役を負うことになります。
 しかし、「コーディネート役=決定権者=責任者」ではありません。コーディネート役は、様々な関係者の意見を調整し、改修案をとりまとめ、制度の申請と施工の手配を進めます。しかし、全ての段階で決定し、責任を負うのは対象者本人です。
 もちろん、関係者に何ら責任がないわけではありません。もっとも良い、あるいは次善・次々善に有効と思われる改修案を提案する責任があり、決定がなされたら、実行する責任があります。そして提案者は、その改修工事を活用できるようにする説明責任を負っています。

○本人・家族・介護者にとって役立つ。
 住宅改修の第一の目的は、日常生活動作が自分で行えるようになることです。この他、当然ですが、住宅の基本性能である耐久性、効率性、柔軟性についても十分に考慮しなくてはなりません。


●介護給付費が支給される改修の種類
 介護保険法第45条第1項に規定する厚生労働大臣が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類は一種類とし、次に掲げる住宅改修がこれに含まれるものとします。

○厚生労働省が定める居宅介護住宅改修費等の支給に係る住宅改修の種類
(1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑り防止及び移動の円滑化等の為の床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸などへの扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

○いくらまで支給されるのか?
 20万円を支給限度基準額として、うち9割が給付されます。「最高20万円まで支給」されるというわけではありません。尚、一部の市町村では支給限度基準額の割増があります。

○要介護度によって支給額は違うのか?
 要支援1から要介護5まで同じです。厳密には、要支援は「予防給付」、要介護は「介護給付」です。しかし、「住宅改修費支給」制度の内容は同じです。

○何回利用できる?
 原則として、一人1回までの利用となります。
支給限度基準額(20万円)までならば、何回かに分けて利用できます。但し、次の場合に限り、再度の利用が可能となる特例があります。
 ・「3段階リセット」特例
  要介護等区分が3段階上がった場合、新たに20万円の限度基準額として利用することができます。
 ・「転居リセット」特例
  転居した場合は、もとの住所地で住宅改修を利用していても、新たに(20万円を支給限度基準額として)利用できます。

○2人以上の要介護者がいるとどうなる?
 介護保険は、それぞれが被保険者ですから個別に利用することができます。


●介護給付費が支給される改修の申請手続き
 介護保険をはじめとする公的な助成制度による住宅改修費の支給申請にあたっては、住宅改修を行う前に下記の必要書類を揃え、市町村の窓口に提出しなければなりません。
 なお、住宅改修費について制度上は償還払いとなっており、一般的には申請書の受理後、被保険者の指定する口座に振り込まれることになっています。

○事前申請に必要な書類
書類
書き方
介護保険居宅介護(支援)住宅改修費支給申請書
「住宅改修の内容・箇所及び規模」の欄には、改修を行った住宅改修の種類(種類告示第1号から第5号までの別)ごとに、改修を行った箇所及び数量、長さ、面積などの記載をします。
 ただし、添付する工事内訳書でこれらの内容が記載されていれば、申請書には住宅改修の工事種別のみを記載します。
<住宅改修の工事種別>
 ① 手すりの取り付け
 ② 床段差の解消
 ③ 滑りの防止および移動の円滑化のための床剤の変更
 ④ 引き戸等への扉の取替え
 ⑤ 洋式便器等への便器の取替え
見積書
業者によってそれぞれ独自の書式を使用しています。書式は任意で構わないのですが、申請添付用として以下の条件を満たす必要があります。
①「住宅改修の種類」ごとに区分すること。
 手すりの取り付けなどに5種類+付帯工事=計6種類の工事に区分します。
②申請対象工事を明確に区分すること。
 申請対象外の工事を記載してもよいが、明確に区分する必要があります。
③施工箇所・材料名・数量、工事費をできるだけわかりやすく明記する。
 「何をどれだけ使い、工事にいくらかかったか」がわかるように記載します。市町村窓口の建設技術者ではない介護保険担当者が確認できるように、できるだけわかりやすく記載します。区分しようのない項目は別として「・・・工事一式」という表記は避けます。
④諸経費・設計費用の計上も認められている。
 住宅改修の前提として行われた設計及び積算の費用については住宅改修の費用として取り扱うことができますが、住宅改修を行わない設計および積算のみの費用については、住宅改修費の支給対象となりません。
⑤消費税額も明記すること。
 支給限度喜寿額(20万円)は、消費税額を含みます。「消費税は別途」とせず、明記すべきです。
理由書
 被保険者の心身の状況および日常生活上の動線、住宅の状況、福祉用具の導入状況等を総合的に勘案し、必要な住宅改修の工事種別とその選定理由を記載します。
住宅改修の予定の状態・完了後の状態が確認できるもの
①改修前の写真
すべての保険者に添付を求めています。
<撮影の要点>
・写真は、それぞれ日付の入ったもの。
 デジカメなら当然表示できます。日付表示機能がないカメラを使用する場合は、黒板や紙に書いて写し込む必要があります。
・撮影アングルに注意
 改修箇所がよくわかるように。小さな敷居段差などもはっきりわかるようにすること。また、改修前・改修後で違うアングルで撮影しないように。
・あまり小さい写真にしないこと。
 「キャビネ版以上のこと」と指定している保険者もあります。デジカメで撮影しプリンタを使って高品質紙で印刷しても、A4版で単価は10円程度です。「誰が見てもわかりやすい」写真にしましょう
②図面
 提出を求める保険者が2割程度あるようです。改修内容は図に表しているはずですから、図の提示を求められても難しいことはないでしょう。
<保険者の求める図面の内容>
 ・平面図
 ・断面図
本人の動きがわかる見取り図
住宅所有者の承諾書
提出を求める所有者の範囲について、保険者によって見解の相違があります。
①家族・親族が所有者なら(別居でも)不要。(但し、賃貸住宅の場合のみ必要)
②同居の家族なら不要
③本人以外の同居の家族でも必要
 公営住宅の場合は「模様替え申請の承認書」などが必要になります。

○改修後の申請書
 償還払いの場合は、「支給申請書」です。(受領委任払いの場合は、施工業者が保険者へ請求します)

書類
書き方
添付使用
①領収書
 申請者(被保険者本人)宛の領収書、原本の提示が必要です。申請対象外工事分の金額を含んでいてもかまいませんが、内訳書で区分を明示する必要があります。
②内訳書
 見積時と変更がなければ同じ内容の内訳書になります。変更がなければ提出不要としている保険者もあります。
③住宅改修完了後の状態が確認できるもの
 改修後の写真です。当然に、改修前と同じアングルで、改修内容がわかりやすい写真でなくてはいけません。
事前申請後、工事の内容に変更がある場合
○軽微な変更(部材の変更など、金額の増減がないか少額、写真の差し替えも不要な程度)の場合、支給申請時の内訳書に記載し、説明する。
○大掛かりな変更(工事項目の変更、金額の増減が大きい、理由書や写真・図面の差し替えが必要な程度)の場合は、再度事前申請を行う。
○「内容変更審査依頼書」の提出を求める保険者もあります。
その他
保険者によって様々な手続き上の特徴があり、次のような文書の提示を求めるところもあります。申請前に、保険者に確認して下さい。
 ・内容変更審査依頼書
 ・退院・退所前の協議書
 ・住宅改造調査票(理由書とは別)

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